第1回京山ESD検定(2008年1月26日実施)の概要



岡山市京山地区ESD推進協議会会長 池田満之

「第3回京山地区ESDフェスティバル」(2008年1月26日(土)〜27日(日)に開催)の初日、京山ESD検定入門講座に引き続き、第1回京山ESD検定を実施しました(採点と答え合わせは、すぐにその場で行い、合わせて解答の説明をしました)。


検定問題は50問で、「地球と世界と日本の現状」と「ESDについて」が各20問ずつ、「京山地区について」が10問で、試験時間は20分間としました。問題は、私(池田)のほか、中学校の先生、高校の先生、大学の先生、環境省の職員などに協力して頂き作成しました。小学校高学年から80歳の高齢の方まで、幅広い世代の人が受けられました。中には翌日が大学入試の本番という受験生もいました。人数割合では、小学生、中学生、高校生の割合が年代別では多かったですが、小中学校の先生方も受けられていました。

答案提出者の平均点は79点で、最高点は94点、最低点は56点でした。問題の設定目標が、受験者が概ね50点以上はとれること(意欲をなくさないためにも)、平均点が70〜80点くらいになること、受験者の知識・意識レベルを確認でき、その後のESD活動に役立つ情報(取り組むべき視点や課題)が得られることでしたので、その点はうまくいったのではないかと思います。なお、下位の5名は小学5年生だったことから、小学生にはやはり少し難しかったようです。


第1回京山ESD検定問題用紙(PDF版)

第1回京山ESD検定模範解答(PDF版)


この試験から、多くのことがわかりました。特徴的だったことを以下に挙げます。

「地球と世界と日本の現状」で多くの人が間違えた問題からわかったこと

●日本人が1日あたりに出している二酸化炭素の量を、低く捉えた人と多く捉えた人の数が半々であったことから、地球温暖化問題から二酸化炭素のことが大きな話題になっているものの、自分がどれくらいの量を出しているかを定量的にわかっている人は少ないと思われます。このことが、二酸化炭素削減の取り組みの漠然さにもつながっているのではないかと思われます。アンケートなどをとると、多くの人が省エネなど、地球温暖化対策に取り組んでいると答えられます。しかし、現実には削減量は目標を大きく下回っていることも、実際に自分がどれくらいの二酸化炭素を出していて、どれくらい削減しないといけないのか、定量的につかめていないことにも起因してはいないでしょうか。

●フードマイレージの最も多い国をアメリカと答えた人がとても多く、二酸化炭素の排出量の順位と同じように捉えているようでした。フードマイレージでは、日本はアメリカの3倍以上で、世界でダントツの一位だという認識をもっと持つべきだと思います。折しも、石油の価格が高騰し、輸送コストが大きな関心事になっている時だけに、しっかりと現実を認識し、地産地消のより一層の促進などにつなげていきたいです。

●日本は低炭素社会を目指すことを、先日のダボス会議でも福田総理が話されていましたが、この「炭素」というキーワード、まだ馴染みが弱いようで、炭素税という言葉を問う問題で、排気税と答えた人が多くいました。

●1秒間に世界中で失われている森林(緑)の量を、低く捉えた人と多く捉えた人の数が半々であったことから、緑の減少に関しても漠然としか捉えていない人が多いようでした。世界的な緑の減少の早さは、私たちにとっては脅威であり、しっかりした認識を皆さんに持ってもらいたいです。

●日本のエネルギー自給率を食糧自給率とほぼ同じレベルと捉えている人が多くいました。食糧自給率もいまや40%を割り込み深刻ですが、エネルギーはそれよりもはるかに深刻です。エネルギーに関する認識をもっとちゃんと持ってもらえるようにしないと、省エネの推進などと呼びかけても、危機意識があまいのではないかと思います。

「ESDについて」で多くの人が間違えた問題からわかったこと

●日本ユネスコ協会連盟と読売新聞社がここ数年行っているESDの取り組み(ずっと地球と生きる学校プロジェクト)を問うたところ、全日空(ANA)が行っている利用客のためのキャンペーン(ハッピースマイルキャンペーン)と答えた人と、京山地区で取り組んでいる「子どもの水辺てんけんプロジェクト」と答えた人が半々で、読売新聞が全国紙で行っているものの認知度の低さと、ネーミングがANAなどのキャンペーンに負けていることから、ネーミングがいかに難しく、大事であるかを考えさせられました。

●日本ユネスコ国内委員会(事務局:文部科学省)が、ESDの日本語訳である「持続可能な開発のための教育」を広めやすいように、漢字六文字で表記しようとしている動きは良いことですが、日本ユネスコ国内委員会が提示している六文字を三択で問うたところ、大半の人があたりませんでした。もう少し多くの人がピンとくる言葉の方が、ESDを広める上では良いかもしれません。

●ESDが十分な成果を出せなくても困らないのは誰でしょうかという問いに、三分の二の人が先進国の人々と答えたことは深刻だと思います。ESDは確かに途上国にとっても重要ですが、同じように先進国にとっても重要だという認識をもっとみんなが持つべきではないでしょうか。

「京山地区について」で多くの人が間違えた問題からわかったこと


●自分たちの足元、京山地区の川や用水に捨てられたり、流れ込んだゴミや汚れはどこへ行くかを三択で問うたところ、過半数の人が飲料水や農業用水を供給してもらっている旭川と答え、実際に流れ込んでいる笹ヶ瀬川と答えた人が半分もいなかったことはショックでした。京山地区では、季節ごとに水辺の環境てんけんなども行い、水に関しては特に力を入れて取り組んでいるにもかかわらず、多くの人が笹ヶ瀬川を経由して児島湖へ影響していることの認識が低いようでした。こうしたことも、児島湖の環境の改善が思うように進まない現状の大きな要因ではないでしょうか。サステナビリティ(持続性)を考えれば、私たちはどこの水を使い、どこの水に影響を与えているのか、そのつながりをちゃんとわかって暮らさなければなりません。しかし、現実には、影響を受けることには意識が高いが、影響を与えることには意識が低い人が多いということを、この結果は示しているように思います。私たちは、持続可能な社会を実現させるため、今一度、自分の暮らしのさまざまなつながりを学びあい意識しあう必要があるのではないでしょうか。


今回の検定は50点以上が合格で、合格者には京山ESDフェローの認定書を授与しました。


  



>> 戻る <<