(1)京山地区「緑と水の道」プロジェクト
この地域の絵図町住民は、地域のよい環境や伝統の保全を目指して2003年に絵図宣言を行い、ESDとともに活動を進めていました。平成19年12月15日に、岡山市京山地区ESD推進協議会が主催した「市長と語る会」で、京山中学校科学部の中学生達が「緑と風の道」を提案したことが契機となり、実現しました。ESDからまちづくりへとつながった事例です。
「キャンドルナイト&とうろう流し2019in緑と水の道」(2019年8月24日)案内
「キャンドルナイト&とうろう流し2017in緑と水の道」(2017年8月27日)案内
平成27年1月20日 「岡山市景観まちづくり賞」を受賞
平成27年3月18日 国土交通省「手づくり郷土(ふるさと)賞」を受賞
「手づくり郷土賞」受賞した「庭園都市おかやま 緑と水の道づくり」の概要紹介
<授賞式でのスピーチのいくつかからの抜粋>
手づくり郷土賞選定委員の荻原礼子さんによる選定委員講評(抜粋)
皆さん、受賞おめでとうございます。今日、あらためて現地を歩かせてもらって、また、皆さんが熱心に話されるのを聞いて、受賞するに値するところだな、良かったなと思いました。この「手づくり郷土賞」は、いかに市民が汗を流して、思いを込めて行ったかという点が重要で、そういう点で、ここはまちぐるみで行い、また、はじめにワークショップで子ども達がこういうことがいいんじゃないかと意見を出して作ってきたというところに着目致しまして、評価が、支持が得られました。あらためてうかがってみますと、まちぐるみで、まず住民の方からここをこういうふうにしていったらいいという意見を出していったと聞きました。普通は、行政とかがこういう事業をやるからどうだいといってワークショップで人を集めるのが多いんですが、こちらはかなり主体的に住民の方が率先して川をよみがえらせていきたいという思いを持ってやってこられました。また、それから今日、会長さんにうかがいましたら、小学校、中学校、高校、大学、NPOの方、いろんな主体が関わって、本当に盛り上げてきたんだなということが、計画の中からも読み取れてきました。それから、それをうまく成功に導いたのは、市と県が連携して協力して事業を行ったということが大きかったのではないかと思います。けっこう市だけが主体でとか、県とか、そういう一つと住民との連携というのは割とあるのですが、ここのように市と県とが協力してやる事業というのは、あるようで割と連携がとれない、一体的にやるという場面が少ないので、ここは非常にうまくいったのではないかと思います。そこらへんにも関係者のご苦労があったのではないかと思います。今日、空間を見ましても、現地に来てはじめてわかりましたけど、広場と道と川といういい空間が一体的になっていて、道路の方にもハンプがあって工夫されて、速度を落とすことなど、いろんなことを心配されて工夫されたんだなと、本当に手づくりの工夫が込められた空間になっていることが見てとれました。そういうことで非常にすばらしいと感じました。私も20年くらい前に、地元の川で、手づくり郷土賞をいただいたのですが、世田谷でやったのですが、ここのように行政と一体となってはできなかったので、うらやましく思いました。私はその時から、子どもと一緒にやることが大事なんじゃないかなと思っています。昔は、みんな川で遊んで育ってきました。今日も会長さんにお聞きしたら、小さい頃は川でよく遊んだんだとお聞きしました。そういう思い出があると、人はそういう環境を、ふるさとを心のよりどころと感じ、そういう環境で育つってことがふるさとへの思いを非常に強くするのだと思います。それが今の子ども達は、川が遊べるところではなくなって、ファミコンとか、ゲームとか、バーチャルなところで遊んでいますが、やはり昔、子どもの頃に遊んでいたからこそ、今、よみがえらせようという熱意につながってきたのではないかなと思います。そういう意味では、こういう活動の中で、子どもと一緒に考え、子ども達も関わって生き物を再生していくということが、子どもも育てますし、子どもの心も育てますし、それがゆくゆくはまちの担い手、このまちを良くしたいという子ども達の思いを育てていって、大きくなったときに、このまちを良いまちとして次の世代に伝えていこうという思いを、心の中に育んでいくんだと思います。単なる皆さんの世代が、小さい頃にそういう中で、コミュニティの温かさですか、学校の先生とか同級生だけではない、まちの人とのふれあいというのが生まれて、そこでこのふるさと、このコミュニティの中で生きているということを感じられるんだと思うんですね。そういう意味では、公共空間の子どもを含めた環境教育とか、子どもを含めてまちの環境を再生していこうという試みは、ただ本当に空間だけではなく、このまちの次の担い手を育てていく、そういう活動にもつながっていくことだと思います。その子ども達が、今、心のよりどころのない時代になっていますけど、そういうつながりのある、そういう人達とつながって、川で遊んだという思い出があることが、どれだけその人の心の支えとなっていくかということを深く感じますので、そういう意味でも、公共空間の再生に住民が関わっていく、子ども達、まちぐるみで関わっていくということは、非常に大きな意味があるのではないかと思います。これから自治体の方が単にものをつくる、コンクリートでものをつくるのではなく、それをいかに市民の生活の場にしていくかとか、人を育てる場にしていく、そういうハードからソフトをつくるんじゃなく、ソフトをおこしながら、それがハードという形におきていく、そういうプログラムが求められています。川もそうですし、公園もそうですし、そういうモデルとして、この今日の賞はあると思いますので、これから岡山市あるいは岡山県の方で、この取り組みがここをまたきっかけとして広がっていくことをお祈り申し上げています。本日は、おめでとうございました。
受賞者を代表して大森雅夫岡山市長による挨拶(抜粋)
皆さん、こんにちは。市長の大森でございます。今日は「手づくり郷土(ふるさと)賞」の受賞ということで、私、市長になってお渡しすることはけっこうあるんですが、いただくのははじめてでして、言葉に窮します。昨年、国連のユネスコのESDの会議、いったい岡山にとってどういう意味をもっているのだろうかと考えることがあります。で、いろいろ考えた結果、一番というものは、我々岡山市民にESDの心が残ったということなんじゃないかなと思います。環境保全、そして国際協力、様々な面でこれからやっていかなければならない、そしてそれを次世代につなげていかなければならないという心が、我々にとって、その灯がともったのが昨年のESDの会議だったのだろうと思います。で、心が重要ですが、それを体現していかないといけない、その一つがこの観音寺用水であったのではないかなと思います。高原会長、村岡副会長、そして池田さん、また、今日おこしの皆さん方のご努力で、子ども達が提案したものがこういう形で実現していった、そのプロセス、そして出来上りのもの、そしてこれからのマネジメントの仕方によって、本当の一つのESDが体現されるんだろうというように思っています。それを国の方で郷土(ふるさと)賞という形で認めていただいたこと、ありがたいことだと思います。私としては、こういう心を大切に、そして一つ一つのそれを具現化、具体化していくということを、これから心がけていきたいなと思います。皆さん方、宜しくお願い申し上げたいと思います。国土交通省に対しては、謝意を表するところであります。また、荻原さんの選定、決して間違っていなかったと思います。
受賞者を代表して池田満之(京山地区ESD推進協議会会長)による活動報告(抜粋)
(冒頭に、ESD活動の流れを受けて、地域の記憶を映像で残し、手づくりの映画という形で後世へ伝えていく活動をしている地域のボランティア団体である「ムービー京山」について紹介し、その「ムービー京山」が作成した映画『観音寺用水「緑と水の道」物語』を上映して、この道ができるまでのプロセスとこの道の見どころ、この道が目指したものやこの道に寄せる地域の思いなどを見てもらいました。その後、その内容を補足する形で、パワーポイントを用いて話をしました。)
この取り組み、地域みんなで取り組んできたのですが、取組自体は結構古くて、1990年代には、映像の中にも出てきましたが、「京山エコクラブ」という地域の町内会などの活動があって、そこに民間ユネスコ活動が入ってきて、地域の市民を中心にしながら、観音寺用水をみんなで調査してきました。その結果として出来たのが、2001年の「観音寺用水MAP」で、今日、お配りしている袋の中に入っています。観音寺用水周辺の町内会の皆さんにアンケート調査をしたり、現地を調べたりして、どういうふうにしたいのかをまとめました。その中で、もう1回、自分たちの水辺を、自分たち自身で見直していこう、戻していこうということでやりました。この話し合いの中には、国土交通省岡山河川事務所長も入って下さって、こういった水辺、用水ですけども国交省の方にも加わっていただき、一緒になって考えてきました。その中で、水辺から自分たちで地域を見直すということをしてきました。こうしたベース活動をやりながら、先ほど映画にありましたように、地域としては絵図町がまちづくりとして「絵図宣言」というものを出して、その中で地域の歴史とか、景観とか、生活環境をより良く守っていくんだと宣言されていました。その宣言と、地域で進めていた観音寺用水プロジェクトとがつながっていって、今の活動になっていきました。その中で、地域のESD活動に取り組んでいた子ども達が、京山地区ESD推進協議会主催の「市長と語る会」のところで、中学生が地域の声を反映しながら、緑と水の道を提言したのがスタートでした。その時に当時の市長さんが、「それは良いことだから応援するよ」と言ってくれたことで、事業が進んでいきました。この事業の特色は、単にこの京山地区、絵図町とか伊島学区だけを見ているのではなくて、その後ろには岡山市が示している岡山市の都市ビジョンというのがあって、岡山市の総合政策、その中に岡山市は「水と緑が魅せる心豊かな庭園都市」をつくるという岡山市の大きな都市ビジョンがあります。その都市ビジョンにも通じる形で、この地域のあり方を、京山地区のまちづくりという中で、地域として考え、その中に絵図町が進めてきたまちづくり、「絵図宣言」とかを入れ込んだ形で、この「緑と水の道」のプロジェクトというのが生まれてきたのです。この緑と水の道プロジェクトとしては、緑に繋がりがあり、人と人、人と生物のふれあいを大切にする空間づくりという、都市計画とマッチする形でやってきました。その中で、先ほど映画にあったように、みんなで現地を調べ、ワークショップを開き、市や県の人と一緒になって話し合って進めてきました。その中で、水辺について、ここはこうした方が良いなとか、ああした方が良いなと、いろんな意見が地域からいっぱい出てきました。それらを岡山大学の学生さんとかが一緒になって取りまとめてくれたりして、検討に検討を重ねてきました。地元住民へのアンケート調査などもさせてもらいました。そして、こういった環境をつくってやった方が良いねという提案をまとめる作業をずっとやってきました。その中で、岡山大学の学生達が頑張ってくれて、フォトモンタージュによる整備イメージの検討案もつくってくれました。例えば、用水側に歩道をつくったらこうなるねとか、じゃあもう少し生態系に配慮したらこうなるかなとか、じゃあ反対側に歩道をつくったらどうだろうと、こうしたいくつもの検討をやりながら、じゃああの方が良いね、この方が良いねというのをやってきて、(パワポで図を示しながら)まぁ、この辺で落ち着いたのですが、こうしたことをやってきました。そして、それを大きな一枚ものの中に入れて、県にはこうしてほしいな、市にはこうしてほしいな、地元としてはこうしたいなということを、提言書として「見える化」してまとめていき、それらを市長や市の幹部の方との協議会などの場ですり合わせをしていきながら、市の方へ提言書としてあげていきました。さらに、その上で、官学民による整備推進協議会をつくって進めてきました。市民の思いというのはいっぱいあって、でも、市民の思いだけではものごとはうまくいかないのは市民もわかっていますから、市民主導ではあるのですが、行政システムにのっとった形で取り組みを進めてきました。整備推進協議会の中では毎回、会議を開いてはそこで生まれてきたアイデアというものを、「ニュース」という形で市の方で発行していただきまして、これを地域住民の皆さんにもう1回返していって、今、協議会ではこういう状況ですよということを地域の皆さんにお伝えして、そして地域の皆さんから出てきた声をまた推進協議会に、地域を代表して協議会に出席した人が反映させていくという形で、地域一体になってこの計画をさらに進めていくということをやってきました。その中で、単に地域だけでなく、この学区にはすぐそこにノートルダム清心女子大学などの大学もありますので、大学も授業の中で取り上げていただいて、大学の学生さん達がモニュメントをつくるならこんなのが良いんじゃないですかというのをいっぱい考えてくれました。これは大学もそうですし、ほかの小中学校などもそうなんですが、みんなで考えて、その中で出てきたものを市の方で取り入れた形で、今回、あのようなモニュメントもつくっていただきました。そうした中で、地域の高齢者とかが結構水辺とかに歩道がなくて危なかったり、土日になると、サッカーの試合とかがある時は(道全体が)駐車場状態だというような、道路空間がさっき映画にも出ましたが、こうような手すりがつけられたり、水辺へ降りられる空間とか、安心して歩ける空間とかという形で、市民が望むものをこういう形で具体化できました。京山地区でも「えーものを子孫の代まで」というESDのスローガンに基づいて、後世に残せる空間をつくれたのかなと思います。で、つくったものを、地域の小学生、中学生だけでなくて、大学生とかみんなが一緒になって利活用していくというようなこともしてきました。その中のものが、今、いろんな形で地域の中で反映されているという状況にあります。この間、つい最近には「市長と語る会」の後継みたいなものなんですが、ESDフェスティバルの中で、「京山ESD対話」で、ここには市長や議長さんにも来ていただいて話し合いをしました。その時に今回は、小学生の方から観音寺用水のすぐ横に北富用水というのがあるのですけども、そちらもできたら観音寺用水のようにしたいなぁという提案がありました。今回つくった整備空間というのが、その整備空間そのものも今後もっともっと良くしていくんですけども、そこだけではなくてもっと周辺部もさらに良い環境をどんどんつくっていって、岡山市全体にこうした空間が広がっていくように、子ども達や市民の声を地域でみんなが活かしていって、広げていくような動きがつくれていったら良いなと思います。そういう点では、この観音寺用水と共に、周辺の環境がどういうふうに変わっていくかをぜひ今後、期待していただけたらと思っています。京山地区では、これらの全体をさらに国交省とかが出されていますニューツーリズムの考え方に沿って、「ESDツーリズム」という形で、地域全体の環境を活かしつつ、地域全体が充実した持続可能な地域づくり、人づくりができるように、今後とも続けていきたいと思っています。そう言う点ではこの「緑と水の道」の空間も、今後も清心の大学生とかいろんな人達が一緒になって、地域と共に頑張ってもっと良いものをつくっていこうとしておりますので、3年後になるか4年後になるかわかりませんが、その時はぜひ次は大賞をいただけるように、荻原さんにその時はぜひ今後は「これは大賞ですよ」とバーンと言っていただけるように、これからも頑張っていきたいなと思っています。私の方からの活動報告は以上です。ありがとうございました。
池田満之が使用した150318活動報告プレゼンPPT
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